くらしをつくる人NOTE
2025.11.27

家庭と仕事
紆余曲折がありながら、満を持して陶芸家として独立した安藤さん。
初めに工房を構えたのは、神戸の山の方にある団地の中。ジュエリーをメインに作陶を始めたそうです。
独立と結婚の時期が重なり、家庭とのバランスを考えて仕事の量をセーブしようとしていた安藤さん。
家庭と仕事の両立は誰にとっても難しい問題です。
金子「どちらで独立されたのですか?」
安藤さん「初めは神戸の山の方にある団地を借りて工房を構えました。畳の上で作陶して、作品を押入れに仕舞っていました。当時はジュエリーをメインで作っていたので、スペースもさほど必要では無かったんです。小さな机の上でできる仕事を続けられたらって、考えていましたね」
金子「そうだったのですね。うつわはどのようなきっかけで制作するようになったのでしょうか」
安藤さん「たまたま、マグカップの注文が入ったんですよ。そのタイミングからうつわも手掛けるようになりました」
金子「自分が初めて拝見した安藤さんの展覧会には、小さな花器が展示されていました」
安藤さん「そうです、そうです。窯も小さかったので、小さめのものを作っていましたね。ところが、マグをインスタであげるようになったら、うつわのお問い合わせが徐々に入ってきたんです」

金子「将来的に陶芸家としてもっとこうなりたいみたいな思いはあったのですか?」
安藤さん「その頃は、結婚したばかりで第一に子供が欲しかったんです。子供が出来た時に両立できるくらいの仕事量にしたいと思っていたから、あまり広げたくなかったんです」
金子「なるほど」
安藤さん「でも、子供が1年くらいできなくて、気づいたらその間に仕事がどんどん増えてきちゃって。更に夫の転勤で富山に行くことになったんです。すると地元のギャラリーから展覧会のお声がかかって、嬉しいから展覧会をするじゃないですか。その後に仕事のオファーがボーンと増えて、ボーンの時に子供ができて、ウワー!モウムリーって、なったんです(笑)」
金子「(爆笑)。それっていつのことですか?」
安藤さん「7年前位からずっとですかねー。子供ができなかったからムギちゃん(安藤さんの愛犬のシーズ―)を飼い始めたら、犬、仕事、子供、フギャーってなって(笑)。富山だから親も知り合いもいないし、てんやわんやで、ひっちゃかめっちゃかな日々が続いたんです。半年間、陶芸を休むまでは毎日が祭りみたいな感じでした(笑)」
金子「展覧会もコンスタントに入っていましたもんね」
安藤さん「何も取り逃したくないってみたいな感じで、全力でやっていましたね。雨晴さんでの最初の展覧会は独立して1年目くらいだったと思います」
金子「その頃は、空の諧調を意識したうつわや小さめの花器がメインでしたね!懐かしいです」

人間回帰
スイッチが入ると、何事にも全力で向き合わずにはいられなくなるという安藤さん。
作陶の楽しさと苦しさを7年間存分に味わった後、
ついに限界を超えてしまい、半年間休業することになります。
金子「安藤さんのお話を伺っていると、人生のターニングポイントがいくつもありますね。
アメリカからの一時帰国、北欧で出逢った空の諧調、作陶を始めて、お子様が生まれて、陶芸から離れて。とアップダウンが激しかったようにも思いますが今はどのような心境ですか?」
安藤さん「凪。ですね(笑)。そうなるように自分の気持ちを抑えていますね」
金子「それって、抑えないと行くところまで行っちゃう感じですか?」
安藤さん「なんでもスイッチが入ると止められなくなりますね。楽しくもあり、苦しくもある。
自分一人ならいいんですけど子供との残された時間を考えるとやっぱり、そっちが大事だなって思うんですよね」
金子「やっぱり、お母さんですね」
安藤さん「あと何年こんな風に近くにいてくれるんだろうと思うと、今はそんなに仕事しなくてもって思っちゃうんですよ。休んだ半年がよかったのかなと。お菓子作りも再開して、オーブンを買い替えちゃいました(笑)」
金子「今度はスイッチがそっちに!(笑)」
安藤さん「お庭の水やりも、鼻歌を歌いながら丁寧にあげられるような生活を過ごせていますね。
以前は、ジェットモードに設定して、心の中で“あんたには5秒しか水あげないからねって”つぶやきながら植物と向き合っていたのに(笑)」
金子「(笑)」
