くらしをつくる人NOTE
2025.11.27

おっちゃんの教え
近所のおっちゃんに教えてもらったスケッチは、今でも安藤さんの作品づくりの始まりを担う、大切なプロセスです。
原寸大のスケッチを描くことで、ついつい楽をしてしまう手を脳がコントロールし、
ひとつひとつの作品の価値を高めるための「美しいライン」を生み出す原動力となっています。
安藤さんが陶芸家になると決めた時に掲げた目標は「美術館に収蔵されるようなアート作品を生み出す作家になること」。
その過程を綿密に考え、追求するあまりに、ご自身が描く「Yuka Andoのブランド像」と「自分の気持ち」との乖離から苦しさが勝ってしまった安藤さん。
ご本人曰く「アメリカでは永住権を得ることを目的に生活していたから、苦しくなってしまった。そこから解放されるために陶芸を志したのに、結局、同じように目的と手段を間違えてしまっていた気がするんです」とのこと。
「うまく描こうなんてしなくていいねん。由香ちゃん、まずはこのグーを100個かいてみっ!」
おっちゃんのこの言葉は、「由香ちゃん、もっと自然体でいいんだよ」って、
今も安藤さんの心に語りかけているのかも知れません。

おばあちゃんになるまで
金子「Yuka Andoがこれから目指すものとは?」
安藤さん「そんな、“プロフェッショナル”のようなコメントを求めるんですか?(笑)。
以前は、美術館に収蔵されるようなアート作品を創りたいって思っていましたけど、今はおばあちゃんになるまで、釉薬の実験を永遠にしたいなって思っています。
ただただ、実験をして探求したい。
それを発表できる場があるのであればそれ以上に幸せなことは無いなと思うようになりました」
金子「安藤さん、生き生きしていますね!」
安藤さん「揺らぎから生まれる断片こそが自分自身であって、肯定すべきもの。
それが100年後、アーカイブされて一冊の本になったらいいなって思えて。
そうしたら気持ちが楽になりました。“Yuka Ando やっちゃえ!”って!」
金子「(笑)」
安藤さん「そう思えるまでは、一つ前に手掛けた作品よりうまく釉薬をかけないとって、歯を食いしばりながら挑んでいました(笑)」
金子「その顔が想像できますね(笑)」
安藤さん「でも、今は、“はいはい、こんなもんやでー”って、できるようになって。
とても前向きな気持ちになれました。自分の中で理性と感性が行ったり来たりしていたんですけど、今はこれでいいやってなれたんです」
金子「作為から、少しずつ離れているという意味で言うと、元々やりたいって思っていたアート作品にYuka Andoが近づいているのかもしれないですね!」


安藤由香
- 1982年
- 大阪生まれ 兵庫県西宮市で育つ
- 2005年
- カリフォルニア州立大学ロングビーチ校経済学部 卒業
- 2007年
- ロサンゼルスで社会人生活2年を経て陶芸を志し帰国
- 2009年
- 京都府立陶工高等技術専門校卒業後、丹波焼にて修行
- 2012年
- デンマークへ渡る
- 2013年
- 独立
- 2016年
-
富山県氷見市に工房を構える
現在は兵庫県丹波篠山市に拠点を移し活動
Photo / Yuka Yanazume
Interview / Kenichi Kaneko (AMAHARE)
