くらしをつくる人NOTE

Vol.17
2023.5.2
Vol.17 陶芸家 池田優子さん <UMI編>

夢のセカンドハウス

昨晩、愉しい時間を過ごしたダイニングルームに併設されているのは池田さんのアトリエ。

池田家のセカンドハウスは茶室を備えた古い民家を
海が大好きなご家族の理想のかたちに設えた心地よい空間です。

都会に暮らしながら、自然の近くに2つ目の家を持つのは誰もが憧れるライフスタイル。

池田さんのご両親も大阪のご自宅とは別に築100年以上の古民家を奈良に所有されているそうです。
その理由は農作物を育てるための環境が欲しかったからとのこと。

色々とお話を伺う中で池田さんはご両親の生き方に影響を受けながら、
ご自身のスタイルを確立されてきたのかなと感じました。

陶芸家を志したのもお父様の趣味がきっかけだったようですよ。

金子「あらためて、池田さんが陶芸家になったきっかけを教えてください」

池田さん「グラフィックデザイナーになるためにサンディエゴに留学していたのですが卒業後に帰郷するとなんと実家に陶芸の窯場ができていたんです(笑)。
父親が急に陶芸をやりたいと思って、機械や道具を揃えたみたいで」

金子「それはびっくりしますね(笑)」

池田さん「父が陶芸をする姿を見て楽しそうだなと思って、軽い気持ちで土に触れたら私もすっかりはまってしまったんですよ。
その頃はグラフィックデザイナーとして会社に勤めていたんですけど、気持ちはすっかり陶芸家になるつもりになっていて。
でも陶芸の学校を出ていないし、弟子入りもしていなかった中でどうすれば実現できるかを考えた結果、『自分で直接売るしかない!』って思ったんです」

金子「すごい勢い!ご両親が奈良にセカンドハウスを所有されていると以前伺ったことがあったと思います。陶芸を志したのも、徳島の家を持ったのもご両親の影響を色濃く受けているのかなと思いました」

池田さん「確かに!そうかもしれないですね」

一人六役

卒業後グラフィックデザイナーとして働いていた池田さんでしたが
陶芸家を志すために退職し、絵描きのアルバイトをしながら開店の準備を始めます。

ご自宅の壁に飾られていたこの美しい絵は池田さんが描いたもの。
アーティスト肌の池田さんが始めたお店もとてもユニークなものだったようです。

池田さん「陶芸家になるために、勤めていた会社を退職し、絵描きのアルバイトをしながら開店の準備を進めました」

金子「池田さんは絵がとってもお上手なので絵描きのアルバイトもされていたのですね。
壁に飾ってある絵もとても素敵です!お店はどこに出されていたのですか?」

池田さん「デザイナーさんなどクリエイティブな仕事をしている方が入居していた南船場にあるビルの7階です。月曜日から水曜日に実家の窯で制作して、週末にお店を開けるというスタイルをとっていました」

金子「当時はどのような作品を制作されていたのでしょうか?」

池田さん「自分の中でコンセプトを決めて運営していたんですよ。
私はギャラリーの店主役。
展示されているのは店主が選んだ5人の作り手の作品。
織部の作家、モノトーンに拘る作家、練り込みばかりつくる作家というように
それぞれの個性が伝わるラインナップにしていました。
本当は全員私なんですけどね(笑)」

金子「斬新(笑)。当時から、織部のうつわも手掛けていたのですね。意外です!」

池田さん「そうなんです。最初から一つの作風を追い求めるのではなく、色々な焼き物を手掛けたことが今も役に立っていますね」

金子「それもあって、雨晴にも様々なテイストの作品を届けてくださっているのですね。納得です!」

池田さん「5年くらいお店を続けていたら、雑誌やギャラリーさんからお声がけ頂けるようになったんです。お店での出逢いをきっかけに陶芸家として歩んでいけるようになったのは運がよかったなあと思いますね」

金子「とてもユニークな経歴ですね。陶芸の技術は全て独学で身に付けたのでしょうか?」

池田さん「釉薬の同好会に在籍していたことがあって、釉薬の組み立て方やテストの仕方など多くのことをそこで学びました。
一つの釉薬に対して一人が10種類くらいの色見本を焼成して、それを持ち寄っていたんです。10人いたから100通りのテストピースが同時に焼きあがって。
その中から自分好みの色を選ぶことができました」

金子「へー、それは面白いですね」

池田さん「その結果をみんなでシェアしてそれぞれが好みのものをピックアップするんですけど、人によって選ぶものが違うのも興味深かったですね」

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海街に住むこと