くらしをつくる人NOTE

Vol.12
2020.12.15
陶芸家 釋永岳さん

第十二回目は、富山県東岩瀬で作陶に励む「陶芸家」釋永岳(しゃくなががく)さんです。

大地、火星、夜明け。

富山県東岩瀬にアトリエをかまえる釋永岳さんの工藝ブランド「GAKU」は
美しい自然の情景を想起させるものばかり。

自然への感謝の気持ちを持ちながら富山で活躍する料理人の方々と想いを共有し
料理の舞台としてのうつわを日々制作しています。


東岩瀬という町

コロナの影響もあり、作り手のところに伺う機会がほとんど無いまま一年が過ぎようとしていた2020年の11月。
展覧会前にどうしても釋永さんにお会いしたいと思いやってきたのは富山県東岩瀬町です。

東岩瀬は富山駅から車で20分くらいとアクセスのよい場所に位置し
江戸時代には加賀藩の港町として栄えていた歴史ある町。

当時の面影を残した廻船問屋群の街並みが残る、僕も大好きなところです。

ここに訪れる度に感じるのは目に見えて町が発展していること。
釋永さんはいつも東岩瀬の愉しいところを案内してくださいます。

初訪問の時は、この町の名士である桝田酒造さんの酒蔵、富山県内のお酒を沢山扱う酒販店、老舗の和菓子店、釋永さんを中心とした工芸作家のアトリエとギャラリー、フレンチレストランなどをご紹介いただきました。

その時も十分愉しむことができたのですが今回お邪魔した時には
高級な和食店、イタリアン、寿司店、そしてモダンなブルワリーと日本酒の角打ち。
なんと宿泊施設まで新しくできているではありませんか。
一日ではとても回りきることのできない富山の美味しい食と文化に出逢える豊かな町に進化しています。

この町に暮らすこと。
そして富山を中心とした料理人の方々との出逢いや繋がりが釋永さんの作品作りにどのように影響しているのか。

雨晴金子が伺います。


食卓に轆轤場

代々焼き物に関わる血筋に生まれた釋永さん。
お父様も著名な陶芸家です。
そんな陶芸のサラブレッドとも呼べる釋永さんですが、その道を志すまでには紆余曲折あったそうです。

金子 「釋永さんが陶芸家になったきっかけを教えてください」

釋永さん「何ででしょうね(笑)」

金子 「(笑)」

釋永さん「僕の実家は轆轤場に食卓があったんですよ」

金子 「轆轤場に食卓?」

釋永さん「そうなんです。僕たちがご飯を食べている横で父親が焼物を作っていたんですよ。
そういった環境で育ったこともあって “ものづくりをしながら生きていきたいな”という想いは
物心ついた時からあったのかもしれませんね」


東京藝大

ものづくりに興味を持ちながらも具体的な将来像を見出すことができていなかった釋永さん。
転機が訪れたのは高校生の時のことでした。

釋永さん「高校生の時に、姉の影響でデッサン教室に通っていました。
当時、グレイトフル・デッドの音楽にドハマりしていたのでデッドヘッズファッションを買いに
原宿に行きたくて、東京での夏期講習にも参加していたんです(笑)」

金子 「(笑)」

釋永さん「田舎者だったからわからなかったけど、予備校内には受験=東京藝大みたいな風潮があって。僕もその流れにのって受験したんです。でも残念ながら落ちてしまって」

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料理人か彫刻家